星間飛行
アニメソングの名曲は数あれど、その中でも一番歌詞が好きなのはマクロスF挿入歌の「星間飛行」だ。それもそのはず、作詞はかの偉大なる松本隆氏だ。作曲も偉大なる菅野よう子氏。この曲は劇中で銀河一のアイドルであるランカ・リーの持ち曲として披露されるが、まさに銀河一の存在にふさわしい名曲だ。
なぜこの曲の歌詞が好きなのか、自分でも多分よく分かっていない。直接的な表現を最小限まで抑え、想像の余地をたっぷり残しているからなのだろうか。よく分からないが、いい。
この曲の歌詞は比喩がとても多いと感じる。
Aメロの前半なんかは全て比喩だ。
水面が揺らぐ
風の輪が広がる
触れ合った指先の
青い電流
風の輪ってなんだろうか。
台風?そんなバカな。
台風だったら水面が揺らぐとかいう騒ぎじゃないから多分違うんだろう。
しかし、風の輪という言葉の不思議な響きがいい。
そして青い電流。昔「ビビビッ」という言葉が流行語になったらしいが、それと似た時代を感じさせる響き。昭和のアイドル感漂う曲調によく合っている。
そしてAメロ後半。
見つめ合うだけで
孤独な加速度が
一瞬に砕け散る
あなたが好きよ
孤独な加速度?分かるような分からないような。
そして怒涛の比喩ラッシュを経て突然の「あなたが好きよ」。
いきなりストレートなメッセージが来て、パズルのピースがはまったように「あなたが好き」という感情がくっきりと迫ってくる。
Aメロ、Bメロの時点で既に歌詞の世界に溺れそうだが、サビの歌詞ももちろん素晴らしい。
こんな歌詞がある。
濃紺の星空に
私たち花火みたい
普通の考えだと、花火を一緒に見ていて楽しい、もしくは、あの頃は楽しかったなみたいなところに落ち着きそうなものだ。
しかし、銀河一のアイドルともなると発想が違う。
「私たちが花火」なのだ。
「あなた」と「私」が出会い、見つめ合い、ともに生きようとすることは、もはや花火のように人々を魅了し、記憶に刻まれてゆく。
感服だ。
「星間飛行」という名曲に対して有る事無い事適当な解釈を述べてみたが、確実なのはこの曲が名曲だということだ。
私は曲を聴くときにあまり歌詞を気にしない方だ。しかしこんな名曲を聴いてしまうと、歌詞の世界の深さ、難しさ、面白さを感じずにはいられない。
作曲も含め、こんな曲を書けるようになるまでは死ねない。
歌詞にしろ曲にしろ、どんなものがいいのかという問いは常に頭の中をぐるぐると回り続けている。
きっと死ぬまで止まらないし、もしかしたら死んでも止まらないかもしれない。
いい歌詞って何だろう。
いい曲って何だろう。
日々物思いに耽る。
マサタカ